朝から小雨が降っていた。
用事のために殿の部屋に入ると、殿は球磨川をじっと見下ろしていた。
俺は、その後ろ姿で殿がなにを考えているのかわかった。
「殿、堤防工事のことですか」
そう言うと、殿は振り向いて「うん」と頷いた。
「雨が降っているのを見て、思い出したよ。できるだけ早く工事に取り掛かりたい」
「それでしたら」
俺は殿の前を失礼して自室に行き、3枚の紙を持って殿の部屋に戻った。
「工法については、これらに記しておきました」
そう言い添えて紙を差し出すと、殿は紙と俺を交互に見た。
様子からして、驚いているようであった。
「僕、よりあににこれを書いておけって言ったっけ?」
「ご指示はありませんでしたが」
清正殿のお話を忘れぬようにと思い、書き留めておきました、と俺は答えた。
殿は紙をめくりながら、
「さすがだ」
と満足そうな顔をしていた。
殿様の御ためなれば、このくらいは当然のことである。
指示がなくとも、常に気を利かせて行動しなければ、殿の補佐役は務まらない。
それに加えて、球磨川を整備し、このくにをより豊かにしたいと考える殿の意志を支え、実現に近づけることが俺の仕事である。
用事のために殿の部屋に入ると、殿は球磨川をじっと見下ろしていた。
俺は、その後ろ姿で殿がなにを考えているのかわかった。
「殿、堤防工事のことですか」
そう言うと、殿は振り向いて「うん」と頷いた。
「雨が降っているのを見て、思い出したよ。できるだけ早く工事に取り掛かりたい」
「それでしたら」
俺は殿の前を失礼して自室に行き、3枚の紙を持って殿の部屋に戻った。
「工法については、これらに記しておきました」
そう言い添えて紙を差し出すと、殿は紙と俺を交互に見た。
様子からして、驚いているようであった。
「僕、よりあににこれを書いておけって言ったっけ?」
「ご指示はありませんでしたが」
清正殿のお話を忘れぬようにと思い、書き留めておきました、と俺は答えた。
殿は紙をめくりながら、
「さすがだ」
と満足そうな顔をしていた。
殿様の御ためなれば、このくらいは当然のことである。
指示がなくとも、常に気を利かせて行動しなければ、殿の補佐役は務まらない。
それに加えて、球磨川を整備し、このくにをより豊かにしたいと考える殿の意志を支え、実現に近づけることが俺の仕事である。
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