午後、例の如く監視を兼ねて殿の部屋で仕事をしていると、殿が、
「お茶の作法をきちんと覚えたから、茶室で披露させてよ」
と自信満々に言った。
その輝く瞳の向こうに、俺は一昨日の茶室での凄惨な光景を見ていた。
「それは確かですね?前のように、茶をぶちまけて顔が緑色になるようなことはありませんね?」
五木の茶職人ならまだしも、武家に生まれて頭から茶にまみれるとは、嬉しくもない貴重な体験であった。
「今度はきちんとできるよ」
殿は俺の顔色など気にせず、意気揚々と立ち上がった。
そこまで言うのなら、と俺は殿について茶室に向かった。
しかし実際、殿が茶を点てる様子を見て、なるほど前言に恥じない腕前になっていると思った。
「殿、上出来ですね」
俺が褒めると、殿は得意そうに笑い、
「よりあにの本を読んで、真面目に勉強したんだよ」
と言った。
「それでは」
勉学に励み、またひとつ教養を豊かにする努力をした殿様の御ため、俺は席を立って自室に行き、菓子が入っている箱を持って茶室に戻った。
「ご褒美です。茶菓子代わりにお召し上がりください」
そう言って箱を開けて差し出すと、殿は「ありがとう」と喜んで食べ始めた。
打てば響く殿様であれば、家臣としてこれほど仕えやすい主君はない。
「お茶の作法をきちんと覚えたから、茶室で披露させてよ」
と自信満々に言った。
その輝く瞳の向こうに、俺は一昨日の茶室での凄惨な光景を見ていた。
「それは確かですね?前のように、茶をぶちまけて顔が緑色になるようなことはありませんね?」
五木の茶職人ならまだしも、武家に生まれて頭から茶にまみれるとは、嬉しくもない貴重な体験であった。
「今度はきちんとできるよ」
殿は俺の顔色など気にせず、意気揚々と立ち上がった。
そこまで言うのなら、と俺は殿について茶室に向かった。
しかし実際、殿が茶を点てる様子を見て、なるほど前言に恥じない腕前になっていると思った。
「殿、上出来ですね」
俺が褒めると、殿は得意そうに笑い、
「よりあにの本を読んで、真面目に勉強したんだよ」
と言った。
「それでは」
勉学に励み、またひとつ教養を豊かにする努力をした殿様の御ため、俺は席を立って自室に行き、菓子が入っている箱を持って茶室に戻った。
「ご褒美です。茶菓子代わりにお召し上がりください」
そう言って箱を開けて差し出すと、殿は「ありがとう」と喜んで食べ始めた。
打てば響く殿様であれば、家臣としてこれほど仕えやすい主君はない。
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