夕方だったか。
書類の整理をしていると、同じく家老の深水頼蔵が部屋にやってきた。
俺に客が来ていると言うから、応接間に向かおうとした。
すると頼蔵が、
「いえ、違います。門のほうへ行ってください」
と俺を止めた。
門?
怪訝に思いながらも、奴の言いなりになるなど不服だが俺は言われた通り門へ向かった。
そこにいたのは富山の薬売りだった。
「こちらの殿様にも富山のよく効く薬をお試しいただきたく思い、参りました」
門番と押し問答をしていた薬売りは、俺を見ると満面の笑顔を浮かべた。
斬りたい。
「殿に薬は必要ない。帰れ」
「しかし、いかほどに健康でいらっしゃる殿様にも、ひとつやふたつ、悪いところはおありでしょう」
なおも薬売りは食い下がった。
「確かに悪いところはある。だが、馬鹿につける薬は無い」
薬売りは帰っていった。
妙な人間から殿を守る。
これも、殿様の御ためだ。
今日もいい仕事をした。
書類の整理をしていると、同じく家老の深水頼蔵が部屋にやってきた。
俺に客が来ていると言うから、応接間に向かおうとした。
すると頼蔵が、
「いえ、違います。門のほうへ行ってください」
と俺を止めた。
門?
怪訝に思いながらも、
そこにいたのは富山の薬売りだった。
「こちらの殿様にも富山のよく効く薬をお試しいただきたく思い、参りました」
門番と押し問答をしていた薬売りは、俺を見ると満面の笑顔を浮かべた。
斬りたい。
「殿に薬は必要ない。帰れ」
「しかし、いかほどに健康でいらっしゃる殿様にも、ひとつやふたつ、悪いところはおありでしょう」
なおも薬売りは食い下がった。
「確かに悪いところはある。だが、馬鹿につける薬は無い」
薬売りは帰っていった。
妙な人間から殿を守る。
これも、殿様の御ためだ。
今日もいい仕事をした。
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