昨日から今日にかけて、殿と薩摩の島津家に赴いてきた。
薩摩のくにには、いわゆる城というものはなく、屋形づくりの平城を城と呼んでいる。
殿が島津家当主の義久と話をしている間、俺は当主の弟の島津義弘に会ってきた。
そして精神の鍛錬をした。
まず、見た目が暑苦しい。
外で蝉が鳴いているなか、目の前に筋肉男が座ると、さすがの俺でも(冷や)汗がでた。
そのうえ、話が通じない。
薩摩ことば云々以前に、単語単位でしか聞いていないため、話が噛みあわない。
さすがの俺でも(抜刀寸前の)苦笑いがこぼれた。
当主との話が終わると、殿は長誠(ながとも)様に会った。
長誠様は殿の4歳下の弟で、5年前に殿と入れ替わりで薩摩に人質に赴いた。
殿は弟に会えるのを楽しみにしていたらしい。
弟が部屋にやってくると、目の色を変えた…ちがう、目を輝かせた。
2人は滅多に会えない身分である。
兄弟水入らずで物語りでもしたいだろうと思い、俺は席を外した。
すると島津家重臣の伊集院忠棟が「茶でもどうか」と俺を誘ったので、世話になった。
その夜は城に泊まり、早暁、島津家を後にした。
見送りには、島津の当主と長誠様、当家の家臣が出てきた。
義弘はまだ寝ていた。
馬に乗って門を出るとき、長誠様が、
「兄上、お元気で」
と言った。
殿は振り返り、頷いた。
「義久さんの言うことをよく聞けよ」
「心得ております」
長誠様は兄に向かって快活に返事した。
当の兄は、手綱を握り締めてなにかに耐えていた。
この殿様の御ためを考えたが、俺は「いきましょう」としか言えなかった。
薩摩のくにには、いわゆる城というものはなく、屋形づくりの平城を城と呼んでいる。
殿が島津家当主の義久と話をしている間、俺は当主の弟の島津義弘に会ってきた。
そして精神の鍛錬をした。
まず、見た目が暑苦しい。
外で蝉が鳴いているなか、目の前に筋肉男が座ると、さすがの俺でも(冷や)汗がでた。
そのうえ、話が通じない。
薩摩ことば云々以前に、単語単位でしか聞いていないため、話が噛みあわない。
さすがの俺でも(抜刀寸前の)苦笑いがこぼれた。
当主との話が終わると、殿は長誠(ながとも)様に会った。
長誠様は殿の4歳下の弟で、5年前に殿と入れ替わりで薩摩に人質に赴いた。
殿は弟に会えるのを楽しみにしていたらしい。
弟が部屋にやってくると、目の色を変えた…ちがう、目を輝かせた。
2人は滅多に会えない身分である。
兄弟水入らずで物語りでもしたいだろうと思い、俺は席を外した。
すると島津家重臣の伊集院忠棟が「茶でもどうか」と俺を誘ったので、世話になった。
その夜は城に泊まり、早暁、島津家を後にした。
見送りには、島津の当主と長誠様、当家の家臣が出てきた。
義弘はまだ寝ていた。
馬に乗って門を出るとき、長誠様が、
「兄上、お元気で」
と言った。
殿は振り返り、頷いた。
「義久さんの言うことをよく聞けよ」
「心得ております」
長誠様は兄に向かって快活に返事した。
当の兄は、手綱を握り締めてなにかに耐えていた。
この殿様の御ためを考えたが、俺は「いきましょう」としか言えなかった。
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