今日も良く晴れ、日干ししていた俺の襟巻きも、正午過ぎには乾いた。
午前中に渡した本をきちんと読んでいるかを確認するため、殿の部屋に行くと、あのガキは殿は障子の際に座って外を眺めていた。
城の前を流れる球磨川を眺めているらしい。
「よりあに、子供が泳いでいるよ」
気配だけで俺と分かったらしく、背を向けたままそう言った。
「暑いですからね」
机の上の本は、数頁めくられただけで放置されていた。
「昔、父さんに聞いたんだけど」
殿は、俺に本のことを突っ込ませる暇も与えない。
「島津方と大友方がぶつかった合戦で、耳川って川が赤く染まったって、ほんとうなのかな」
「事実ですよ」
俺は机のそばに腰を下ろして答えた。
「ここはきれいなままでいたいね」
殿はいつものように、呟くような小さな声で言った。
これには2つの意味があるように思われる。
1つは、『戦なんて無い、穏やかな世の中にしたい』こと。
2つは、『戦をするなら、他領でやりたい』こと。
俺は殿がどちらの意味で言ったのかを考えたが、その答えは、今後の殿の動きを見ていれば分かるだろうと思い、考えるのはやめた。
「よりあに」
「水浴びをしたいなら、最低1冊は読み終えてからにしてください」
「なんでわかったの」
俺は殿が物心つくか否かの頃から、教育係だか子守り係だか知りませんが、殿にお仕えしているのです。
それくらい分かります。
そうして、午後の俺の仕事は、殿に相良氏法度第1巻を読了させることになった。
午前中に渡した本をきちんと読んでいるかを確認するため、殿の部屋に行くと、
城の前を流れる球磨川を眺めているらしい。
「よりあに、子供が泳いでいるよ」
気配だけで俺と分かったらしく、背を向けたままそう言った。
「暑いですからね」
机の上の本は、数頁めくられただけで放置されていた。
「昔、父さんに聞いたんだけど」
殿は、俺に本のことを突っ込ませる暇も与えない。
「島津方と大友方がぶつかった合戦で、耳川って川が赤く染まったって、ほんとうなのかな」
「事実ですよ」
俺は机のそばに腰を下ろして答えた。
「ここはきれいなままでいたいね」
殿はいつものように、呟くような小さな声で言った。
これには2つの意味があるように思われる。
1つは、『戦なんて無い、穏やかな世の中にしたい』こと。
2つは、『戦をするなら、他領でやりたい』こと。
俺は殿がどちらの意味で言ったのかを考えたが、その答えは、今後の殿の動きを見ていれば分かるだろうと思い、考えるのはやめた。
「よりあに」
「水浴びをしたいなら、最低1冊は読み終えてからにしてください」
「なんでわかったの」
俺は殿が物心つくか否かの頃から、教育係だか子守り係だか知りませんが、殿にお仕えしているのです。
それくらい分かります。
そうして、午後の俺の仕事は、殿に相良氏法度第1巻を読了させることになった。
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