今日は風が強い日だった。
飛んでしまった洗濯物を追いかけて、洗濯の係の者が走り回っていた。
仕事納めの日が近づき、いよいよ今年も、年内に終わらせねばならない仕事の追い込みが始まった。
と言っても、今年は例年ほど慌ただしくなりそうにない。
そこで俺は、書類を区別ごとに紐で綴じながら、
「明日、雉でも狩りに行きませんか」
と殿を誘ってみた。
すると殿はまだ綴じていない書類の束を放り出し、突然襟巻きを引っ張って俺を引き寄せた。
「キジ馬を狩る?」
瞬きをすれば接触してしまいそうな距離で、殿の口元は笑っていたが、目は微塵も笑っていなかった。
キジ馬ではなく雉だと言うと、殿はいつも通りの愛想のいい笑顔に戻った。
「いいねー、雉なんて久し振りだねー。行こうよ」
ばらまいた書類を拾い集めながら、殿は「行こう 行こう」と繰り返した。
殿様の御ため、俺は「ではそのように準備しておきます」と答えつつも、唐突といえども殿の殺気に呑まれてしまったことを不覚に思った。
死ぬかと思った。
飛んでしまった洗濯物を追いかけて、洗濯の係の者が走り回っていた。
仕事納めの日が近づき、いよいよ今年も、年内に終わらせねばならない仕事の追い込みが始まった。
と言っても、今年は例年ほど慌ただしくなりそうにない。
そこで俺は、書類を区別ごとに紐で綴じながら、
「明日、雉でも狩りに行きませんか」
と殿を誘ってみた。
すると殿はまだ綴じていない書類の束を放り出し、突然襟巻きを引っ張って俺を引き寄せた。
「キジ馬を狩る?」
瞬きをすれば接触してしまいそうな距離で、殿の口元は笑っていたが、目は微塵も笑っていなかった。
キジ馬ではなく雉だと言うと、殿はいつも通りの愛想のいい笑顔に戻った。
「いいねー、雉なんて久し振りだねー。行こうよ」
ばらまいた書類を拾い集めながら、殿は「行こう 行こう」と繰り返した。
殿様の御ため、俺は「ではそのように準備しておきます」と答えつつも、唐突といえども殿の殺気に呑まれてしまったことを不覚に思った。
死ぬかと思った。
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