殿に呼び出されたので、俺は物陰を選んで風をことごとく避けながら廊下を通り、殿の部屋に入った。
「書けたよ」
殿が笑顔で見せたのは年賀状であった。
今日は15日なので、例年より10日も早い仕上がりだった。
「これで、飛脚を急かさなくてもいいよね」
殿は十数枚の年賀状を満足そうに眺めた。
「そうですね。今日飛脚の元へ持ってゆけば、間違いなく元旦に届けてもらえるでしょう」
そこで俺ははたと気付いた。
確かに、今から飛脚に渡せば安心である。
しかし、殿自らが書いた年賀状を、ひとに預けて持って行かせるのは若干不安だ。
自分で持って行き、きちんと飛脚が受け取るのを見ねば落ち着かない。
かといって、この寒い中、町に下りるのは気が進まない。
すこし躊躇ったあと、殿様の御ため、
「殿、私がこれから飛脚に預けて参ります」
と言った。
殿は俺の寒がりを知っているので、「大丈夫なの?」と訊いたが、俺はもう一度「行って参ります」と繰り返した。
実際、帰り道では、寒さのあまり城に戻るのを諦めそうになった。
「書けたよ」
殿が笑顔で見せたのは年賀状であった。
今日は15日なので、例年より10日も早い仕上がりだった。
「これで、飛脚を急かさなくてもいいよね」
殿は十数枚の年賀状を満足そうに眺めた。
「そうですね。今日飛脚の元へ持ってゆけば、間違いなく元旦に届けてもらえるでしょう」
そこで俺ははたと気付いた。
確かに、今から飛脚に渡せば安心である。
しかし、殿自らが書いた年賀状を、ひとに預けて持って行かせるのは若干不安だ。
自分で持って行き、きちんと飛脚が受け取るのを見ねば落ち着かない。
かといって、この寒い中、町に下りるのは気が進まない。
すこし躊躇ったあと、殿様の御ため、
「殿、私がこれから飛脚に預けて参ります」
と言った。
殿は俺の寒がりを知っているので、「大丈夫なの?」と訊いたが、俺はもう一度「行って参ります」と繰り返した。
実際、帰り道では、寒さのあまり城に戻るのを諦めそうになった。
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