ここ2,3日、天気が優れない。
今日も朝から雨が降り続いていた。
城下には空に詳しい者が住んでおり、その者が登城してきて言うには、「近々嵐が来る気配がある」そうだ。
この時期の嵐は雨風ともに凄まじく、氾濫した球磨川によって毎年人死にが出る。
城下を見下ろすと、嵐に稲を荒らされる前に収穫してしまおうと、稲刈り作業に追い込みをかける農民たちの姿があった。
さて、この報を受けた城内の人々である。
台所の者たちは、四方八方に飛び回り、大急ぎで数日ぶんの食糧をまとめて買い付けていた。
門番兵たちは、台所の者たちが食糧の搬入に使用する門以外のすべての出入り口を閉鎖し、門に板を打ち付けて暴風対策を施していた。
俺は、吹きさらしの廊下が浸水せぬようにする作業を黙々と行った。
傍で、殿がキジ馬を抱いて、退屈そうに皆の働きを眺めていたが、とうとう、
「僕もやる」
と言い始めた。
一国の主がすることではない、と散々言い聞かせたのだが、やはり徒労であった。
「では、この木槌でそこに板を張ってください」
俺がそう言って仕事を与えると、殿は張り切って木槌で板を打ちつけ始めた。
が、ほかの作業に取り掛かろうとふと目を離した瞬間、
「あ"」
というなんとも表記しがたい声が聞こえてきた。
振り返ると、そこには人差し指を押さえて痛みをこらえている殿がいた。
このまま続けさせると、殿の指がすべてひょうたんのように腫れてしまうだろう。
そんな殿は、面白すぎて見ていられない。
そう思った俺は、殿様の御ため、
「殿、やはり私がやりましょう」
と交代を申し出た。
その後、殿は医務の者によって指を水で冷やされていたが、日が暮れてもまだ殿の人差し指はひょうたんであった。
追記。
この忙しいときに、また書状を携えた「忍者」がやって来た。
「机の上に置いておきますから、必ずお読みくださいね」
そう言って、「忍者」
今日も朝から雨が降り続いていた。
城下には空に詳しい者が住んでおり、その者が登城してきて言うには、「近々嵐が来る気配がある」そうだ。
この時期の嵐は雨風ともに凄まじく、氾濫した球磨川によって毎年人死にが出る。
城下を見下ろすと、嵐に稲を荒らされる前に収穫してしまおうと、稲刈り作業に追い込みをかける農民たちの姿があった。
さて、この報を受けた城内の人々である。
台所の者たちは、四方八方に飛び回り、大急ぎで数日ぶんの食糧をまとめて買い付けていた。
門番兵たちは、台所の者たちが食糧の搬入に使用する門以外のすべての出入り口を閉鎖し、門に板を打ち付けて暴風対策を施していた。
俺は、吹きさらしの廊下が浸水せぬようにする作業を黙々と行った。
傍で、殿がキジ馬を抱いて、退屈そうに皆の働きを眺めていたが、とうとう、
「僕もやる」
と言い始めた。
一国の主がすることではない、と散々言い聞かせたのだが、やはり徒労であった。
「では、この木槌でそこに板を張ってください」
俺がそう言って仕事を与えると、殿は張り切って木槌で板を打ちつけ始めた。
が、ほかの作業に取り掛かろうとふと目を離した瞬間、
「あ"」
というなんとも表記しがたい声が聞こえてきた。
振り返ると、そこには人差し指を押さえて痛みをこらえている殿がいた。
このまま続けさせると、殿の指がすべてひょうたんのように腫れてしまうだろう。
そんな殿は、面白すぎて見ていられない。
そう思った俺は、殿様の御ため、
「殿、やはり私がやりましょう」
と交代を申し出た。
その後、殿は医務の者によって指を水で冷やされていたが、日が暮れてもまだ殿の人差し指はひょうたんであった。
追記。
この忙しいときに、また書状を携えた「忍者」がやって来た。
「机の上に置いておきますから、必ずお読みくださいね」
そう言って、「忍者」
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