今月も、会計処理のために深水頼蔵が部屋にやって来やがった。
「なんですか、これは」
支出をまとめた表を見るなり、頼蔵は目を点にして呟いた。
「先月購入したのは墨だけですか」
頼蔵は『信じられない』とでも言いたげな目で俺を見た。
そんな目で見られても、外食をしないので自分の懐から食事代を出す機会もなく、酒が飲めないので飲み代も生じない。
着物は十分足りており、襟巻きも姪から新しいものを貰ったばかりである。
これらをいちいち説明してやると、頼蔵は、
「あなたは生活に楽しみや娯楽を求めないのですね」
と、今度は哀れむような目で俺を見た。
「世の中は面白いことで溢れていますよ」
そう言うと、頼蔵は資料をまとめて立ち上がった。
俺は、あの殿の傍に仕えているだけで毎日飽きない面白さを感じている。
そして、それは幾ら金を出そうとも金では手に入らない楽しみである。
殿様の御ためは、俺にとって仕事でもあり、さらにある種の娯楽めいた一面も持っているのである。
「なんですか、これは」
支出をまとめた表を見るなり、頼蔵は目を点にして呟いた。
「先月購入したのは墨だけですか」
頼蔵は『信じられない』とでも言いたげな目で俺を見た。
そんな目で見られても、外食をしないので自分の懐から食事代を出す機会もなく、酒が飲めないので飲み代も生じない。
着物は十分足りており、襟巻きも姪から新しいものを貰ったばかりである。
これらをいちいち説明してやると、頼蔵は、
「あなたは生活に楽しみや娯楽を求めないのですね」
と、今度は哀れむような目で俺を見た。
「世の中は面白いことで溢れていますよ」
そう言うと、頼蔵は資料をまとめて立ち上がった。
俺は、あの殿の傍に仕えているだけで毎日飽きない面白さを感じている。
そして、それは幾ら金を出そうとも金では手に入らない楽しみである。
殿様の御ためは、俺にとって仕事でもあり、さらにある種の娯楽めいた一面も持っているのである。
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