ちょうど日が暮れる頃に、人吉城に到着した。
最近は日没が早くなってきたが、夜道を歩かずに済んだことは幸いであった。
殿は一息つくこともせず、部屋に上がるとすぐに留守居を務めていた深水頼蔵から詳細な報告を受けた。
そのとき、部屋の隅の障子が僅かに開かれていた。
頼蔵の話が終わると、殿は、
「そうか。最後までなにも起こらなくて良かった」
と、安堵した表情を浮かべた。
「では、いいですよ」
殿が納得した様子を見届けると、頼蔵は部屋の隅の障子に向かってそう言った。
殿も俺も、いったい何事かと頼蔵が声を掛けた方向を見た。
障子の隙間から出てきたのは殿のキジ馬であった。
キジ馬は、殿を見つけるや否や殿に飛びついた。
「よく待っててくれたね、ありがとう」
なりふり構わずに甘えるキジ馬の頭を撫で、殿も久々の再会を喜んでいた。
その後、殿は旅の埃を落とすために風呂に入ったが、いつもは入浴を嫌がるキジ馬も、喜々として殿の後を付いていっていた。
この旅の間、殿は怪我をすることもなく、病気に罹ることもなかった。
それに加えて、政治的にも熊本訪問は成功した。
この度における俺の殿様の御ためも成功したと言えるであろう。
しかし、殿。
畳の上で、肥後こまを回してキジ馬と遊ぶのはやめてください。
畳にめり込んでいます。
最近は日没が早くなってきたが、夜道を歩かずに済んだことは幸いであった。
殿は一息つくこともせず、部屋に上がるとすぐに留守居を務めていた深水頼蔵から詳細な報告を受けた。
そのとき、部屋の隅の障子が僅かに開かれていた。
頼蔵の話が終わると、殿は、
「そうか。最後までなにも起こらなくて良かった」
と、安堵した表情を浮かべた。
「では、いいですよ」
殿が納得した様子を見届けると、頼蔵は部屋の隅の障子に向かってそう言った。
殿も俺も、いったい何事かと頼蔵が声を掛けた方向を見た。
障子の隙間から出てきたのは殿のキジ馬であった。
キジ馬は、殿を見つけるや否や殿に飛びついた。
「よく待っててくれたね、ありがとう」
なりふり構わずに甘えるキジ馬の頭を撫で、殿も久々の再会を喜んでいた。
その後、殿は旅の埃を落とすために風呂に入ったが、いつもは入浴を嫌がるキジ馬も、喜々として殿の後を付いていっていた。
この旅の間、殿は怪我をすることもなく、病気に罹ることもなかった。
それに加えて、政治的にも熊本訪問は成功した。
この度における俺の殿様の御ためも成功したと言えるであろう。
しかし、殿。
畳の上で、肥後こまを回してキジ馬と遊ぶのはやめてください。
畳にめり込んでいます。
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