そろそろ東の空が明るくなってきたかという頃、殿と俺は熊本城三の丸の門の前で馬に跨っていた。
初日と同様、異例なことに加藤清正自らが送りに来ていた。
「また機会ができたら、遊びに来い。気をつけて帰れよ」
清正は機嫌よく笑っていた。
「はい。またお会いしましょう」
殿はそう言って、「では」と馬を進めた。
俺もあとに従った。
街道沿いの村に宿を見つけた。
主人に部屋の空き具合を訊ねると、丁度あと1部屋空いていると言うので、そこに泊まることにした。
先に部屋に通してもらい、俺が宿の者と詳細を取り決めて戻って来ると、殿は障子を開け、すでに暗くなってしまった村の様子を眺めていた。
「よりあに、どうしてなんだろう」
俺が部屋に入るなり、殿は振り向いてこう言った。
「なにがですか」
俺も殿の横に腰を下ろした。
「どうして、加藤さんは僕にあんなに味方してくれるんだろう」
相良のために兵を出すよりか、いっそのこと球磨も加藤領にしたほうが手っ取り早いのではないか、と殿は言った。
「攻める場合にはそれがいいけど、攻められる場合に第一線になるのが嫌なのかな」
殿は首を捻った。
「実は殿の言う通りかもしれませんし、違うかもしれません」
俺は殿を見据えた。
「真意は分かりません。しかし、肩を持ってやるという人を信じなければ、疑いを持っていることが相手に伝わり、いつかは味方をも失うでしょう。相良のお家を守るためには、真意はどうであれ、力になってくれる人を認め、頼りに致しましょう」
殿様の御ため、俺は膝を正して申し上げた。
殿は「うん」と頷き、
「一番大事なものを忘れていたよ、ありがとう」
と微笑んだ。
初日と同様、異例なことに加藤清正自らが送りに来ていた。
「また機会ができたら、遊びに来い。気をつけて帰れよ」
清正は機嫌よく笑っていた。
「はい。またお会いしましょう」
殿はそう言って、「では」と馬を進めた。
俺もあとに従った。
街道沿いの村に宿を見つけた。
主人に部屋の空き具合を訊ねると、丁度あと1部屋空いていると言うので、そこに泊まることにした。
先に部屋に通してもらい、俺が宿の者と詳細を取り決めて戻って来ると、殿は障子を開け、すでに暗くなってしまった村の様子を眺めていた。
「よりあに、どうしてなんだろう」
俺が部屋に入るなり、殿は振り向いてこう言った。
「なにがですか」
俺も殿の横に腰を下ろした。
「どうして、加藤さんは僕にあんなに味方してくれるんだろう」
相良のために兵を出すよりか、いっそのこと球磨も加藤領にしたほうが手っ取り早いのではないか、と殿は言った。
「攻める場合にはそれがいいけど、攻められる場合に第一線になるのが嫌なのかな」
殿は首を捻った。
「実は殿の言う通りかもしれませんし、違うかもしれません」
俺は殿を見据えた。
「真意は分かりません。しかし、肩を持ってやるという人を信じなければ、疑いを持っていることが相手に伝わり、いつかは味方をも失うでしょう。相良のお家を守るためには、真意はどうであれ、力になってくれる人を認め、頼りに致しましょう」
殿様の御ため、俺は膝を正して申し上げた。
殿は「うん」と頷き、
「一番大事なものを忘れていたよ、ありがとう」
と微笑んだ。
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