今日はいよいよ、殿が待ちに待った熊本城見学の日であった。
もちろん俺も同行できた。
もしものときのために、この城の櫓の配置等を覚えておくことを念頭に置いて見学した。
朝から浮かれっ放しの殿は当てにしない。
人吉城とは違い、熊本城の石垣は表面がまったく平らになっている。
これだけでも登りにくいのだが、石垣の途中から角度がほぼ垂直になり、さらに反り返っている。
殿の好きな武者返しである。
「綺麗だな~」
石垣を見上げ、殿は感嘆の声を上げていた。
「試しに登ってみてもいいですか?」
返されることを分かっているのに登りたがる殿を、清正は面白そうに笑って、
「おう、登れるもんなら登ってみろ」
と促した。
案の定、途中までは順調に登られたが、中頃になると身動きできなくなった。
「どうだ、無理だろう」
清正は下から殿に向かって叫んだ。
「ほんとうに無理ですね」
無理と言っているのに、殿は嬉しそうだった。
さて、登ったは良いがどうやって下りるのだろう、と俺は考えた。
不可能であることを承知で登ったのであるから、なんらかの妙案があってこそだ。
あれほど威勢良く煽った清正も、そのときになってようやく顔色が変わった。
武者返しと言うだけに、敵を返して落とし、損害を与えるためのものである。
一旦手を掛けた以上、登りきるか落ちるかの2択でしかないのだ。
「お前、どうするんだ」
「え?」
次の瞬間に、殿は跳ねるように石垣から飛び降りた。
まるで放物線のように滑らかな曲線を描き、地面に降り立つ鳥のように軽やかに着地した。
「実際に効果を体験できて良かったです」
殿は、何事もなかったかのようにそう感想を述べた。
清正も俺も、きっと目が点になっていたことだろう。
殿様の御ため、俺は、
「満点ですね」
と言った。
「だよね、これだけ威力があるなら満点だよね」
殿は再び石垣を見上げてそう言った。
「石垣じゃなくて、お前がな」
清正は殿にきっちり突っ込みを入れていた。
もちろん俺も同行できた。
もしものときのために、この城の櫓の配置等を覚えておくことを念頭に置いて見学した。
朝から浮かれっ放しの殿は当てにしない。
人吉城とは違い、熊本城の石垣は表面がまったく平らになっている。
これだけでも登りにくいのだが、石垣の途中から角度がほぼ垂直になり、さらに反り返っている。
殿の好きな武者返しである。
「綺麗だな~」
石垣を見上げ、殿は感嘆の声を上げていた。
「試しに登ってみてもいいですか?」
返されることを分かっているのに登りたがる殿を、清正は面白そうに笑って、
「おう、登れるもんなら登ってみろ」
と促した。
案の定、途中までは順調に登られたが、中頃になると身動きできなくなった。
「どうだ、無理だろう」
清正は下から殿に向かって叫んだ。
「ほんとうに無理ですね」
無理と言っているのに、殿は嬉しそうだった。
さて、登ったは良いがどうやって下りるのだろう、と俺は考えた。
不可能であることを承知で登ったのであるから、なんらかの妙案があってこそだ。
あれほど威勢良く煽った清正も、そのときになってようやく顔色が変わった。
武者返しと言うだけに、敵を返して落とし、損害を与えるためのものである。
一旦手を掛けた以上、登りきるか落ちるかの2択でしかないのだ。
「お前、どうするんだ」
「え?」
次の瞬間に、殿は跳ねるように石垣から飛び降りた。
まるで放物線のように滑らかな曲線を描き、地面に降り立つ鳥のように軽やかに着地した。
「実際に効果を体験できて良かったです」
殿は、何事もなかったかのようにそう感想を述べた。
清正も俺も、きっと目が点になっていたことだろう。
殿様の御ため、俺は、
「満点ですね」
と言った。
「だよね、これだけ威力があるなら満点だよね」
殿は再び石垣を見上げてそう言った。
「石垣じゃなくて、お前がな」
清正は殿にきっちり突っ込みを入れていた。
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