休憩をしていると、椎葉から来たと言う若者に出会った。
どうやら、椎葉と球磨を往来している商人らしい。
この山道を歩き続けるとは感心なものだと言うと、
「他に同業者がいないぶん、よく儲かりますから」
と、満更でもなさそうな顔をした。
「椎葉の棟梁、那須弾正の娘を知っているか」
商人ならば知っているのではないかと思い、彼に椎葉の娘のことを尋ねてみた。
彼は親しみをもってキジ馬を抱き上げたものの、遠慮なく威嚇されてしまい、苦笑いを浮かべ、
「もちろん知っていますよ」
と頷いた。
「椎葉で最も美しく、それは例えようのない方だと伺っております。もっとも、私のような身分の者はお顔を拝見することも叶いませんがね」
商人は、そのような方に一目でいいから会ってみたいものだ、と漏らしていた。
「しかし、少々お気の強い方とも聞いたことがあります。自尊心が人並み以上なのでしょうか、これも美人だからかも知れませんね」
気の強い女、それは初めて聞く情報だった。
気位が高いとなると、殿には少々合わないのではないだろうかと考えたが、これもあくまでも噂である。
実際に会ってみなければ事実はわからない。
それに、そのような娘でも、相良のお家に十分魅力を感じさせられさえすれば、少しは穏やかで殿に従順になるのではなかろうか。
殿様の御ため、相良側が値切って頼み込むのではなく、娘がぜひとも嫁ぎたいと思うような説得をしなければならない。
どうやら、椎葉と球磨を往来している商人らしい。
この山道を歩き続けるとは感心なものだと言うと、
「他に同業者がいないぶん、よく儲かりますから」
と、満更でもなさそうな顔をした。
「椎葉の棟梁、那須弾正の娘を知っているか」
商人ならば知っているのではないかと思い、彼に椎葉の娘のことを尋ねてみた。
彼は親しみをもってキジ馬を抱き上げたものの、遠慮なく威嚇されてしまい、苦笑いを浮かべ、
「もちろん知っていますよ」
と頷いた。
「椎葉で最も美しく、それは例えようのない方だと伺っております。もっとも、私のような身分の者はお顔を拝見することも叶いませんがね」
商人は、そのような方に一目でいいから会ってみたいものだ、と漏らしていた。
「しかし、少々お気の強い方とも聞いたことがあります。自尊心が人並み以上なのでしょうか、これも美人だからかも知れませんね」
気の強い女、それは初めて聞く情報だった。
気位が高いとなると、殿には少々合わないのではないだろうかと考えたが、これもあくまでも噂である。
実際に会ってみなければ事実はわからない。
それに、そのような娘でも、相良のお家に十分魅力を感じさせられさえすれば、少しは穏やかで殿に従順になるのではなかろうか。
殿様の御ため、相良側が値切って頼み込むのではなく、娘がぜひとも嫁ぎたいと思うような説得をしなければならない。
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