朝、弾正に挨拶に伺うと、娘には会えないと言い渡された。
「露袈裟に嫁入りの件を伝えたところ、不機嫌になって部屋に閉じこもってしまっておる。誠に申し訳ないが、娘の気が向くまで待ってもらえないか」
父親に勝手に嫁ぎ先を決められた、娘なりの反抗なのであろう。
「承知致しました。露袈裟殿が会ってもよいと申されるまで、私をここに置いて頂ければ幸いです」
無理を強いて、相良の印象を悪くするわけにもいかない。
俺は敢えて謙虚にそう答え、会えるようになれば知らせて欲しい旨を頼んだ。
「弾正殿、姫にこれをお渡し願えますか」
懐から小さな木彫りのキジ馬を取り出し、弾正に差し出した。
「球磨の玩具です。見知らぬ上に戦の絶えぬ土地に嫁げと、難しい願いをさせて頂いております。しかし、球磨はこのような玩具もある良いくにであることも、露袈裟殿には知って頂きたいのでございます」
木彫りのキジ馬は、若い娘にも好かれていることを深水頼蔵から聞いていた。
「わかった。有り難く頂戴し、露袈裟に渡しておく」
弾正はキジ馬を受け取り、「きっと奴も気に入るであろう」と、俺に申し訳なさそうな笑みを向けた。
殿様の御ため、キジ馬で娘をその気にできればこの上ないことである。
「露袈裟に嫁入りの件を伝えたところ、不機嫌になって部屋に閉じこもってしまっておる。誠に申し訳ないが、娘の気が向くまで待ってもらえないか」
父親に勝手に嫁ぎ先を決められた、娘なりの反抗なのであろう。
「承知致しました。露袈裟殿が会ってもよいと申されるまで、私をここに置いて頂ければ幸いです」
無理を強いて、相良の印象を悪くするわけにもいかない。
俺は敢えて謙虚にそう答え、会えるようになれば知らせて欲しい旨を頼んだ。
「弾正殿、姫にこれをお渡し願えますか」
懐から小さな木彫りのキジ馬を取り出し、弾正に差し出した。
「球磨の玩具です。見知らぬ上に戦の絶えぬ土地に嫁げと、難しい願いをさせて頂いております。しかし、球磨はこのような玩具もある良いくにであることも、露袈裟殿には知って頂きたいのでございます」
木彫りのキジ馬は、若い娘にも好かれていることを深水頼蔵から聞いていた。
「わかった。有り難く頂戴し、露袈裟に渡しておく」
弾正はキジ馬を受け取り、「きっと奴も気に入るであろう」と、俺に申し訳なさそうな笑みを向けた。
殿様の御ため、キジ馬で娘をその気にできればこの上ないことである。
PR
COMMENT