余所見をしながら廊下を歩いていると、曲がり角で出会い頭に深水頼蔵とぶつかった。
その衝撃で、頼蔵が持っていた書類が廊下に散らばった。
「悪い」
俺はすぐに書類を拾い集め、頼蔵に渡した。
「すいませんね」
頼蔵はそう言って書類を受け取った。
「なぜお前が謝る。俺が余所見をしていたのが悪いだろう」
「そうですか?私もぼんやりと歩いていましたから」
頼蔵はにこにこと微笑んでいた。
こいつはいつも愛想がいい。
「お前は穏やかだな」
俺が見つけた深水頼蔵の良いところの最後のひとつ、3つ目は「温厚」だ。
下剋上のこの世の中、人が好いと競争に打ち負けることが多い。
現に、俺もそのような人物を数人見てきた。
「些細なことで突っ掛かり合い、無駄な争いを起こすのは嫌な性分ですので」
相変わらずにこにこと笑いながら頼蔵は言った。
「ただ、譲れない部分では遠慮は致しませんがね、頼兄殿」
眼鏡の奥の奴の目は、俺との実力争いは譲れないと語っていた。
「ああ、そう言えば」
頼蔵はふと表情を変えた。
「殿が、『よりあにの襟巻きを取った姿が想像できなくて、気になって仕事にならない』と仰っていましたよ」
そもそも想像する必要がないだろうに。
俺はそう思いつつも、「では殿の部屋に行っておく」と告げて頼蔵と別れようとした。
が、
「頼兄殿」
と呼び止められた。
「頼兄殿、私も気になります」
俺はとりあえず頼蔵に蹴りを入れて、殿様の御ため、怒濤の勢いで殿の部屋に向かった。
その衝撃で、頼蔵が持っていた書類が廊下に散らばった。
「悪い」
俺はすぐに書類を拾い集め、頼蔵に渡した。
「すいませんね」
頼蔵はそう言って書類を受け取った。
「なぜお前が謝る。俺が余所見をしていたのが悪いだろう」
「そうですか?私もぼんやりと歩いていましたから」
頼蔵はにこにこと微笑んでいた。
こいつはいつも愛想がいい。
「お前は穏やかだな」
俺が見つけた深水頼蔵の良いところの最後のひとつ、3つ目は「温厚」だ。
下剋上のこの世の中、人が好いと競争に打ち負けることが多い。
現に、俺もそのような人物を数人見てきた。
「些細なことで突っ掛かり合い、無駄な争いを起こすのは嫌な性分ですので」
相変わらずにこにこと笑いながら頼蔵は言った。
「ただ、譲れない部分では遠慮は致しませんがね、頼兄殿」
眼鏡の奥の奴の目は、俺との実力争いは譲れないと語っていた。
「ああ、そう言えば」
頼蔵はふと表情を変えた。
「殿が、『よりあにの襟巻きを取った姿が想像できなくて、気になって仕事にならない』と仰っていましたよ」
そもそも想像する必要がないだろうに。
俺はそう思いつつも、「では殿の部屋に行っておく」と告げて頼蔵と別れようとした。
が、
「頼兄殿」
と呼び止められた。
「頼兄殿、私も気になります」
俺はとりあえず頼蔵に蹴りを入れて、殿様の御ため、怒濤の勢いで殿の部屋に向かった。
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