「よりあに、これ見てよ」
また押入れを漁っていた殿が弾んだ声を上げた。
筆を止めてそちらを見ると、殿はお手玉を持っていた。
布の切れ端を寄せ集めて作られた、模様に統一性のないものだった。
「昔、よりあにのお姉さんが作ってくれたやつだよ」
殿はそう言うと、押入れの前でお手玉を放って遊び始めた。
小さい頃の殿はしょっちゅう俺の実家に行きたがり、俺もよく連れて行ったものだった。
そこで近所の子供たちと遊んだり、姉に甘えて可愛がってもらったりしていた。
きっとお手玉遊びも姉に教えてもらったのだろう。
娘の遊びを男に教えるのは如何なものかと俺は思っていたが、殿は楽しそうに姉と遊んでいた。
そして、今日殿が見つけたのは、そのとき姉が殿のためにこしらえたものだった。
俺はまったく関わっていないと言えど、身内が作ったものを殿が未だに持っていてくれているとは嬉しいものだ。
滞りなく放られる2つのお手玉に引かれたのか、キジ馬が寄ってきて興味津々に見つめ始めた。
観客ができて調子付いてきた殿は、お手玉の数を次第に増やしていった。
3つ、4つ、5つ、6つ、7つ…。
数が増える度にキジ馬は喜んでいたが、5つ目辺りから俺は驚きを通り越してなにか呆れのような感情を覚えた。
殿は常人離れした器用さを備えているらしい。
殿様の御ため、俺はそれを活かす方法を考えたが、忘年会の一芸披露の場しか思いつかなかった。
また押入れを漁っていた殿が弾んだ声を上げた。
筆を止めてそちらを見ると、殿はお手玉を持っていた。
布の切れ端を寄せ集めて作られた、模様に統一性のないものだった。
「昔、よりあにのお姉さんが作ってくれたやつだよ」
殿はそう言うと、押入れの前でお手玉を放って遊び始めた。
小さい頃の殿はしょっちゅう俺の実家に行きたがり、俺もよく連れて行ったものだった。
そこで近所の子供たちと遊んだり、姉に甘えて可愛がってもらったりしていた。
きっとお手玉遊びも姉に教えてもらったのだろう。
娘の遊びを男に教えるのは如何なものかと俺は思っていたが、殿は楽しそうに姉と遊んでいた。
そして、今日殿が見つけたのは、そのとき姉が殿のためにこしらえたものだった。
俺はまったく関わっていないと言えど、身内が作ったものを殿が未だに持っていてくれているとは嬉しいものだ。
滞りなく放られる2つのお手玉に引かれたのか、キジ馬が寄ってきて興味津々に見つめ始めた。
観客ができて調子付いてきた殿は、お手玉の数を次第に増やしていった。
3つ、4つ、5つ、6つ、7つ…。
数が増える度にキジ馬は喜んでいたが、5つ目辺りから俺は驚きを通り越してなにか呆れのような感情を覚えた。
殿は常人離れした器用さを備えているらしい。
殿様の御ため、俺はそれを活かす方法を考えたが、忘年会の一芸披露の場しか思いつかなかった。
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