殿の嫁について相談するために、殿の母君である了心様の部屋に赴いた。
頼蔵から聞いた椎葉の娘の話をすると、了心様も興味を持ったようで、考えておくのも良いでしょうと肯定的な答えを返した。
話が終わったので失礼させて頂こうとすると、了心様は、
「薩摩の上井様はどのような方でしたか」
と覚兼の話を出した。
その表情は先程とは一変し、憂えていた。
俺は、さすがは義久の側近を務める方で、抜け目のない嫌な優秀さを持った使者だった、と述べた。
「そうでしたか」
了心様は小さく溜め息をついた。
「島津のお家には、ほんとうに苦しめられます。殿はなにも邪に利益を求めているのではなく、ただ、この家とこのくにの民の暮らしを守るためだけに策を練っていらっしゃると言うのに」
「ただそれだけのことでも、相手方には脅威に見えることもあるようです」
薩摩にとっては、相良が手を結ぶ相手が加藤清正となると、その背後にある中央勢力が気になって仕方がないのである。
「しかし、私は悲しみなどという余計なものは抱いておりません」
了心様は引き締まった声色で言った。
「当代の殿様には、あなたがおります。きっと上手に、この荒れた世を渡る手助けをしてくださると私は信じております」
優しい瞳で信頼を向けられ、俺は感激のあまりつい早口になった。
「殿様の御ため、ご期待に背かぬよう尽力して参ります」
了心様は俺の必死さに「ふふ」と好意的に笑い、庭に見える、まだつぼみの梅の枝を眺めた。
梅には一足先に春が来る。
頼蔵から聞いた椎葉の娘の話をすると、了心様も興味を持ったようで、考えておくのも良いでしょうと肯定的な答えを返した。
話が終わったので失礼させて頂こうとすると、了心様は、
「薩摩の上井様はどのような方でしたか」
と覚兼の話を出した。
その表情は先程とは一変し、憂えていた。
俺は、さすがは義久の側近を務める方で、抜け目のない嫌な優秀さを持った使者だった、と述べた。
「そうでしたか」
了心様は小さく溜め息をついた。
「島津のお家には、ほんとうに苦しめられます。殿はなにも邪に利益を求めているのではなく、ただ、この家とこのくにの民の暮らしを守るためだけに策を練っていらっしゃると言うのに」
「ただそれだけのことでも、相手方には脅威に見えることもあるようです」
薩摩にとっては、相良が手を結ぶ相手が加藤清正となると、その背後にある中央勢力が気になって仕方がないのである。
「しかし、私は悲しみなどという余計なものは抱いておりません」
了心様は引き締まった声色で言った。
「当代の殿様には、あなたがおります。きっと上手に、この荒れた世を渡る手助けをしてくださると私は信じております」
優しい瞳で信頼を向けられ、俺は感激のあまりつい早口になった。
「殿様の御ため、ご期待に背かぬよう尽力して参ります」
了心様は俺の必死さに「ふふ」と好意的に笑い、庭に見える、まだつぼみの梅の枝を眺めた。
梅には一足先に春が来る。
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