「もちろん、あなたは殿の嫁のことも考えていますよね」
午後、茶を貰いに行った台所で深水頼蔵に会った。
「当たり前だ」
俺はそう答えたが、実のところは現状管理だけで手一杯で、嫁のことなど忘れていた。
「家柄も大事ですが、それでいて器量が良いほうがいいですよね。それに殿には年下より年上のほうが合っているでしょう」
頼蔵は俺の嘘を見透かしたように、殿の嫁にするに相応しい女の条件について語り始めた。
俺はそれを聞きながら適当に相槌を打ち、茶をすすりながら他事を考えていた。
「椎葉に美しい娘がいるという噂を耳にしました」
椎葉山は肥後と日向の国境にある険しい山で、13の集落の13人の首長が治めている土地である。
まだ行ったことはないが、その山を越えるのは相当厳しいと聞いたことはあった。
「あの山奥か」
「その山奥からここまで噂が立つほどの美人だそうです。候補に入れてみては如何でしょう」
そう言うと、頼蔵は「では」と台所を後にした。
俺は殿の部屋に戻って机の前に腰を下ろし、キジ馬と遊んでいる殿を眺めた。
いくら殿様の御ためと言えど、いかにも楽しそうにキジ馬と戯れる殿には、まだ嫁は早いのではないだろうか。
そう思いつつも、俺は一度殿の母君にも相談しようと考えた。
午後、茶を貰いに行った台所で深水頼蔵に会った。
「当たり前だ」
俺はそう答えたが、実のところは現状管理だけで手一杯で、嫁のことなど忘れていた。
「家柄も大事ですが、それでいて器量が良いほうがいいですよね。それに殿には年下より年上のほうが合っているでしょう」
頼蔵は俺の嘘を見透かしたように、殿の嫁にするに相応しい女の条件について語り始めた。
俺はそれを聞きながら適当に相槌を打ち、茶をすすりながら他事を考えていた。
「椎葉に美しい娘がいるという噂を耳にしました」
椎葉山は肥後と日向の国境にある険しい山で、13の集落の13人の首長が治めている土地である。
まだ行ったことはないが、その山を越えるのは相当厳しいと聞いたことはあった。
「あの山奥か」
「その山奥からここまで噂が立つほどの美人だそうです。候補に入れてみては如何でしょう」
そう言うと、頼蔵は「では」と台所を後にした。
俺は殿の部屋に戻って机の前に腰を下ろし、キジ馬と遊んでいる殿を眺めた。
いくら殿様の御ためと言えど、いかにも楽しそうにキジ馬と戯れる殿には、まだ嫁は早いのではないだろうか。
そう思いつつも、俺は一度殿の母君にも相談しようと考えた。
PR
COMMENT