お家伝来の甲冑を眺めて、
「なんの変哲もないなあ」
と殿が呟いた。
お家の物に対しなんてことを言うのかと嗜めると、殿は「でも」と不満気だった。
殿が言うには、合戦場で見掛けたり噂で聞いたりした甲冑は、どれもなにかしら特徴と言うべきものがあったのが羨ましかったようだ。
特に、人伝に聞いた越後の上杉家の軍師、直江兼続の「愛」の前立てが気になったと言っていた。
「では、殿は愛に対抗して恋にでも致しますか」
俺は呆れながらこう提案した。
すると殿は、
「恋?こんな字だっけ」
と、筆を取って紙一面に力強く一字を書いた。
「変」。
「いくら殿様の御ためと言えど、自ら変人宣言をしつつ戦場を駆ける大将についてゆくことはできかねます」
殿はきょとんとしていた。
「なんの変哲もないなあ」
と殿が呟いた。
お家の物に対しなんてことを言うのかと嗜めると、殿は「でも」と不満気だった。
殿が言うには、合戦場で見掛けたり噂で聞いたりした甲冑は、どれもなにかしら特徴と言うべきものがあったのが羨ましかったようだ。
特に、人伝に聞いた越後の上杉家の軍師、直江兼続の「愛」の前立てが気になったと言っていた。
「では、殿は愛に対抗して恋にでも致しますか」
俺は呆れながらこう提案した。
すると殿は、
「恋?こんな字だっけ」
と、筆を取って紙一面に力強く一字を書いた。
「変」。
「いくら殿様の御ためと言えど、自ら変人宣言をしつつ戦場を駆ける大将についてゆくことはできかねます」
殿はきょとんとしていた。
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