誰が置いたのか、朝、水を張った桶が放置されているのを井戸の近くに見た。
しかし、よく見てみると水ではない。
覗き込むと、桶一面に氷が張っていた。
氷が張りかけの氷水を見ることは冬には珍しくないことであるが、表面一面に氷が張るのはこの冬初めてのことであった。
朝の挨拶の折にこのことを殿に伝えると、
「どおりで今朝はやたら寒いわけだ」
と、身を縮めて火鉢に手をかざした。
今日、殿は深水頼蔵を呼んで堤防工事について相談し、午後は俺を相手に兵法の鍛錬をした。
胴着から着物に着替え、道場を後にしたのは既に日の沈んだ夕方だった。
「さっきまで暖かかったのに、太陽が沈んだだけでまた寒くなったね」
鍛錬でせっかく温まった体も、吹きさらしの廊下を歩くと瞬く間に冷えてしまった。
あまり体を冷やすのは良くない。
夕食はおでんだと聞いていたので、俺は殿様の御ため、囲炉裏のある部屋を予め暖めておき、台所の者にそこに膳ではなく鍋ごと用意するよう言いつけた。
そこでなら、温かい料理を温かいまま食べることができる。
「ここまでしてくれるなんて」
殿をその部屋に案内すると、俺に付いて歩いていたときの怪訝な目が輝いた。
「ありがとう、申し訳ないくらい嬉しいよ」
俺は殿を甘やかし過ぎなのかもしれないが、殿が喜んでくれるよう頭を働かすことが好きなのである。
しかし、よく見てみると水ではない。
覗き込むと、桶一面に氷が張っていた。
氷が張りかけの氷水を見ることは冬には珍しくないことであるが、表面一面に氷が張るのはこの冬初めてのことであった。
朝の挨拶の折にこのことを殿に伝えると、
「どおりで今朝はやたら寒いわけだ」
と、身を縮めて火鉢に手をかざした。
今日、殿は深水頼蔵を呼んで堤防工事について相談し、午後は俺を相手に兵法の鍛錬をした。
胴着から着物に着替え、道場を後にしたのは既に日の沈んだ夕方だった。
「さっきまで暖かかったのに、太陽が沈んだだけでまた寒くなったね」
鍛錬でせっかく温まった体も、吹きさらしの廊下を歩くと瞬く間に冷えてしまった。
あまり体を冷やすのは良くない。
夕食はおでんだと聞いていたので、俺は殿様の御ため、囲炉裏のある部屋を予め暖めておき、台所の者にそこに膳ではなく鍋ごと用意するよう言いつけた。
そこでなら、温かい料理を温かいまま食べることができる。
「ここまでしてくれるなんて」
殿をその部屋に案内すると、俺に付いて歩いていたときの怪訝な目が輝いた。
「ありがとう、申し訳ないくらい嬉しいよ」
俺は殿を甘やかし過ぎなのかもしれないが、殿が喜んでくれるよう頭を働かすことが好きなのである。
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