今日は成人の日だった。
この日には、町人や農民の男子で、先年1年間に元服を終えた者たちが町ごとに集まり、皆の祝福を受ける。
茶を貰いに台所に行くと、台所の者の知り合いがこれに参加しているということを聞いた。
めでたいことである。
俺のときは、義陽公の次男に仕えると決まったときに元服した。
いつも眺めるだけだった城に上がれるということで異様に張り切り、その日の夜はなかなか眠れなかった記憶がある。
「楽しそうだなあ」
殿は朝から町の様子を眺めていた。
「僕もああいうのに参加したかったよ」
俺が持って来た茶を受け取ると、羨ましそうな目でそれをすすった。
武家の場合は、元服を済ませたあとに特別に皆に祝ってもらうような行事はない。
しかし、国主の家と一武家とは違う。
「なにを仰いますか。殿のときは、御家中のみならずくに中の者が祝い、喜んだのですよ」
14歳の国主が早世し、くにが薩摩に併合されると危ぶんだ領民にとって、薩摩から帰って来た元気のいい弟が跡を継いだことは、なによりも安心を示してくれることであった。
「そうかー…贅沢言っちゃったね」
キジ馬が擦り寄ってきたので、殿は抱き上げてキジ馬の頭を撫でた。
とは言え、俺は未だに殿が大人になったとは思えない。
名を改め、酒を嗜むようになったと言えど、昔と同じようにキジ馬を可愛がり、俺を「よりあに」と呼んでいる以上は、俺の中では殿はまだ長寿丸のままなのだ。
こうなってしまったのも、俺の殿様の御ためが間違っていたことに一因があるのかもしれない。
この日には、町人や農民の男子で、先年1年間に元服を終えた者たちが町ごとに集まり、皆の祝福を受ける。
茶を貰いに台所に行くと、台所の者の知り合いがこれに参加しているということを聞いた。
めでたいことである。
俺のときは、義陽公の次男に仕えると決まったときに元服した。
いつも眺めるだけだった城に上がれるということで異様に張り切り、その日の夜はなかなか眠れなかった記憶がある。
「楽しそうだなあ」
殿は朝から町の様子を眺めていた。
「僕もああいうのに参加したかったよ」
俺が持って来た茶を受け取ると、羨ましそうな目でそれをすすった。
武家の場合は、元服を済ませたあとに特別に皆に祝ってもらうような行事はない。
しかし、国主の家と一武家とは違う。
「なにを仰いますか。殿のときは、御家中のみならずくに中の者が祝い、喜んだのですよ」
14歳の国主が早世し、くにが薩摩に併合されると危ぶんだ領民にとって、薩摩から帰って来た元気のいい弟が跡を継いだことは、なによりも安心を示してくれることであった。
「そうかー…贅沢言っちゃったね」
キジ馬が擦り寄ってきたので、殿は抱き上げてキジ馬の頭を撫でた。
とは言え、俺は未だに殿が大人になったとは思えない。
名を改め、酒を嗜むようになったと言えど、昔と同じようにキジ馬を可愛がり、俺を「よりあに」と呼んでいる以上は、俺の中では殿はまだ長寿丸のままなのだ。
こうなってしまったのも、俺の殿様の御ためが間違っていたことに一因があるのかもしれない。
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