午後の休憩中、殿のところに届いた年賀状を見せてもらった。
加藤清正や島津義久をはじめ、地域の首長など様々な人物から送られてきていた。
それらに1枚ずつ目を通していると、島津家からのものが2枚もあることに気が付いた。
「島津義久と義弘から1枚ずつありますね」
一方は格式張った丁寧な書面で、もう一方は自由奔放、ある意味これが芸術かと思わせるものだった。
「島津さんはいつも別々に送ってくるよね」
殿は苦笑いした。
「でも義弘さんは長誠にも書かせてくれるから、別々のほうが嬉しいかもしれない」
殿はふと呟くようにそう言うと、机の上に広げていた年賀状から1枚を手に取った。
「あいつは1年でまた字が綺麗になった」
俺は殿が差し出す年賀状を受け取った。
確かに、義弘の年賀状には長誠様の字があり、それは去年のものより上達していた。
そこで俺は殿様の御ため、
「では、兄の威厳を保つために書の勉強でも始めますか」
と申し出た。
「僕は字が上手くなるより、どうせなら手紙での駆け引きが上手くなるほうがいい」
殿は何気なくさらりと言ったようだったが、俺は新年早々いたく感銘を受けた。
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