島津に次いで、加藤からも御中元の礼の品が届いた。
熊本の老舗の吟醸酒とカラシレンコンであった。
さすが、天下人の側に仕えた元・都会人である。
吟醸酒とは、贈る品にも高貴なお気遣いがある。
夕食後、殿は家臣一同を広間に集め、皆に振る舞った。
加藤はわざわざ、カラシレンコンに合う種類の酒を選んでいたようだ。
殿も皆も、両者の組み合わせを絶賛していた。
俺は舐める程度に飲んでみたが、日頃から飲み慣れていない所以か、そこそこ美味く感じられただけであった。
その場はそのまま酒宴に流れたが、横に居た深水頼蔵には、
「無理をなさらないほうが良いですよ」
と、お優しいお言葉を掛けていただく始末だった。
情けない。
俺は所詮、酒の席では襟巻きの裾をいじって時間を潰すしかないのだろうか。
そう考えていると、「よりあに」と殿が俺を手招きして呼んだ。
殿の席に寄ると、殿は、「ほら、飲みなよ」と言って酒の入った猪口を俺の前に置いた。
遠慮したいところであったが、殿に勧められた酒である。
断ることなどできず、仕方なく猪口を手に取ると、
「それ、薄いお茶だから」
と、殿が小声で言った。
宴会の度に、早々に湯呑みで茶を飲んでいる俺を見かねて、殿が気を遣ってくれたのだろう。
傍目には酒を飲んでいるように見える。
見た目だけでも俺を宴会に参加させようと気遣ってくれた殿は、どこかの誰かと違ってほんとうに優しかった。
今日の殿の心遣いに応えるため、俺はこれからもより殿様の御ために励んでいこうと思った。
熊本の老舗の吟醸酒とカラシレンコンであった。
さすが、天下人の側に仕えた元・都会人である。
吟醸酒とは、贈る品にも高貴なお気遣いがある。
夕食後、殿は家臣一同を広間に集め、皆に振る舞った。
加藤はわざわざ、カラシレンコンに合う種類の酒を選んでいたようだ。
殿も皆も、両者の組み合わせを絶賛していた。
俺は舐める程度に飲んでみたが、日頃から飲み慣れていない所以か、そこそこ美味く感じられただけであった。
その場はそのまま酒宴に流れたが、横に居た深水頼蔵には、
「無理をなさらないほうが良いですよ」
と、お優しいお言葉を掛けていただく始末だった。
情けない。
俺は所詮、酒の席では襟巻きの裾をいじって時間を潰すしかないのだろうか。
そう考えていると、「よりあに」と殿が俺を手招きして呼んだ。
殿の席に寄ると、殿は、「ほら、飲みなよ」と言って酒の入った猪口を俺の前に置いた。
遠慮したいところであったが、殿に勧められた酒である。
断ることなどできず、仕方なく猪口を手に取ると、
「それ、薄いお茶だから」
と、殿が小声で言った。
宴会の度に、早々に湯呑みで茶を飲んでいる俺を見かねて、殿が気を遣ってくれたのだろう。
傍目には酒を飲んでいるように見える。
見た目だけでも俺を宴会に参加させようと気遣ってくれた殿は、どこかの誰かと違ってほんとうに優しかった。
今日の殿の心遣いに応えるため、俺はこれからもより殿様の御ために励んでいこうと思った。
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