先日、9月の中頃に熊本にゆく旨を書いた書状を加藤清正に送ったのだが、その返事が返ってきた。
「おいしいものを用意して待っててくれるって」
書状を読んだ殿は浮かれながら、暦に熊本行きの予定を書き込んだ。
しかしふと筆を止め、
「よりあにも来てくれるよね?」
と若干縋るような目で俺のほうを見た。
俺は、もちろんお供させていただきます、と答えた。
すると、殿は安堵した表情を浮かべ、朱色の墨で出発予定日の13日に花丸をつけた。
「また僕が変なことを言わないように、目で殺してくれる人がいないと困るんだ」
「お言葉ですが、目で制する、ではないのですか」
俺がそう言うと、
「頼蔵は制するだけど、よりあには殺してくれるよ。わかりやすくて好きだ」
俺は一応、誉め言葉として、そのお言葉を有難く頂戴することにした。
殿はかつて、秀吉公から大目玉を喰らったことがある。
そのときは、頼蔵の祖父である深水宗方が大阪に急ぎ赴き、なんとか弁明を果たして事無きを得た。
あのようなことが再び起こらないように、殿も殿なりに気をつけているようだ。
「では、殿の御ため、ここぞという際は遠慮なく目で殺させていただきます」
殿は笑っていたが、ふとぼそりと呟いた。
「昔、僕がよりあにの襟巻きにじゃれついたときのよりあにの目…いまだに覚えてるよ」
トラウマになっているじゃないですか。
「おいしいものを用意して待っててくれるって」
書状を読んだ殿は浮かれながら、暦に熊本行きの予定を書き込んだ。
しかしふと筆を止め、
「よりあにも来てくれるよね?」
と若干縋るような目で俺のほうを見た。
俺は、もちろんお供させていただきます、と答えた。
すると、殿は安堵した表情を浮かべ、朱色の墨で出発予定日の13日に花丸をつけた。
「また僕が変なことを言わないように、目で殺してくれる人がいないと困るんだ」
「お言葉ですが、目で制する、ではないのですか」
俺がそう言うと、
「頼蔵は制するだけど、よりあには殺してくれるよ。わかりやすくて好きだ」
俺は一応、誉め言葉として、そのお言葉を有難く頂戴することにした。
殿はかつて、秀吉公から大目玉を喰らったことがある。
そのときは、頼蔵の祖父である深水宗方が大阪に急ぎ赴き、なんとか弁明を果たして事無きを得た。
あのようなことが再び起こらないように、殿も殿なりに気をつけているようだ。
「では、殿の御ため、ここぞという際は遠慮なく目で殺させていただきます」
殿は笑っていたが、ふとぼそりと呟いた。
「昔、僕がよりあにの襟巻きにじゃれついたときのよりあにの目…いまだに覚えてるよ」
トラウマになっているじゃないですか。
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