夜明け頃に目が覚め、障子の向こう側から静かに雨音が聞こえたときは落胆した。
しかし、心境は複雑だった。
長居をされるとそれだけこちらの情報を知る機会を与えてしまうが、帰国させれば、こちらで知り得たすべてを義久に報告されてしまう。
こちら側にとってはどちらも不都合だった。
午後、頼蔵控えのもとで殿と覚兼が雑談を楽しんでいる頃、俺は自室でお家のためにはどうするべきかを考えていた。
だが、良案良策は浮かばず、焦りが募るばかりだった。
どれほどの時間が経ったのか、ふと気が付くと、そろそろ茶菓子を出さねばならない時間になっていた。
俺は台所に行き、予め準備されていた生のたい焼きを見て無性に焼きたくなった。
「やらせてくれ」と言い、台所の者が止める声にも耳を貸さず、たい焼きを延々と焼き続けた。
皿の上に狐色になったたい焼きが積まれ、台所に香ばしい匂いが満ち始めた頃、岡本頼氏殿が通り掛かった。
「頼兄殿、疲れているのですか」
頼氏殿には、俺が思い詰めているように見えたらしい。
「殿様の御ためになる方法が考え付かないのです」
俺は網の上のたい焼きを少し起こし、焼き加減を覗き込みながら言った。
「岡本殿も1匹如何ですか」
焼きたてを小皿に取り、頼氏殿に差し出した。
「ではおひとつ貰いますから、あとはここの者に任せて、一緒に休憩いたしましょう」
頼氏殿は、俺を引っ張って部屋に連れて行った。
俺が抱えていることがそう易々と言えないことであると察してくれた頼氏殿は、仕事上の日常的な問題の解決法をさり気なく話してくれた。
核心に触れることのないそのさり気なさが有り難かった。
頼氏殿が教えてくれたことを元にして、お家を守るための方法を考えようと思う。
しかし、心境は複雑だった。
長居をされるとそれだけこちらの情報を知る機会を与えてしまうが、帰国させれば、こちらで知り得たすべてを義久に報告されてしまう。
こちら側にとってはどちらも不都合だった。
午後、頼蔵控えのもとで殿と覚兼が雑談を楽しんでいる頃、俺は自室でお家のためにはどうするべきかを考えていた。
だが、良案良策は浮かばず、焦りが募るばかりだった。
どれほどの時間が経ったのか、ふと気が付くと、そろそろ茶菓子を出さねばならない時間になっていた。
俺は台所に行き、予め準備されていた生のたい焼きを見て無性に焼きたくなった。
「やらせてくれ」と言い、台所の者が止める声にも耳を貸さず、たい焼きを延々と焼き続けた。
皿の上に狐色になったたい焼きが積まれ、台所に香ばしい匂いが満ち始めた頃、岡本頼氏殿が通り掛かった。
「頼兄殿、疲れているのですか」
頼氏殿には、俺が思い詰めているように見えたらしい。
「殿様の御ためになる方法が考え付かないのです」
俺は網の上のたい焼きを少し起こし、焼き加減を覗き込みながら言った。
「岡本殿も1匹如何ですか」
焼きたてを小皿に取り、頼氏殿に差し出した。
「ではおひとつ貰いますから、あとはここの者に任せて、一緒に休憩いたしましょう」
頼氏殿は、俺を引っ張って部屋に連れて行った。
俺が抱えていることがそう易々と言えないことであると察してくれた頼氏殿は、仕事上の日常的な問題の解決法をさり気なく話してくれた。
核心に触れることのないそのさり気なさが有り難かった。
頼氏殿が教えてくれたことを元にして、お家を守るための方法を考えようと思う。
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