障子の外から雨の降る音が静かに聞こえるなか、部屋には殿が漬物を食べる音だけが聞こえていた。
膳の上には熱燗2本と漬物を盛った皿が並べられ、それが殿の晩酌である。
今日は静かに呑みたかったのか、殿は珍しく黙って盃を干し続けた。
キジ馬はすでに眠り、俺は仕事の残りを片付けていた。
黙っている間の殿は、当たり前であろうが無表情である。
なにを考えているのかはわからない。
「よりあに」
不意に殿が俺を呼んだ。
「白菜の漬物を丸ごと食べたらうまいと思う?」
これを聞いたとき、殿はなにか高尚なことを考えているのではないか、と若干期待を抱いていた自分に気が付いた。
「うまい不味い以前に、体に毒です」
「そうか。じゃあやめとこう」
殿はそう言い、箸で漬物をつまんで食べた。
「丸かじりしようと思っていたのですか」
「男なら大胆にね」
自信満々に答える殿様の御ため、
「大胆、の方向性が少々ずれていると思われますが」
と、俺は妙な大胆を実行しようとしていた殿に釘を刺した。
やはり、殿には黙るより話していただかなければ、知らぬうちにおかしなことをされてしまう。
膳の上には熱燗2本と漬物を盛った皿が並べられ、それが殿の晩酌である。
今日は静かに呑みたかったのか、殿は珍しく黙って盃を干し続けた。
キジ馬はすでに眠り、俺は仕事の残りを片付けていた。
黙っている間の殿は、当たり前であろうが無表情である。
なにを考えているのかはわからない。
「よりあに」
不意に殿が俺を呼んだ。
「白菜の漬物を丸ごと食べたらうまいと思う?」
これを聞いたとき、殿はなにか高尚なことを考えているのではないか、と若干期待を抱いていた自分に気が付いた。
「うまい不味い以前に、体に毒です」
「そうか。じゃあやめとこう」
殿はそう言い、箸で漬物をつまんで食べた。
「丸かじりしようと思っていたのですか」
「男なら大胆にね」
自信満々に答える殿様の御ため、
「大胆、の方向性が少々ずれていると思われますが」
と、俺は妙な大胆を実行しようとしていた殿に釘を刺した。
やはり、殿には黙るより話していただかなければ、知らぬうちにおかしなことをされてしまう。
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