廊下を歩いていると、角を曲がった辺りから同僚2人の話し声が聞こえてきた。
「この御家中にも、越後の兼続殿に似た者がいるようだ」
越後の兼続と言えば、上杉景勝に仕える越後第2位の人物であるが、彼らが意図していたのは違う意味でのその人であった。
「進言諫言と言いながら、主君を意のままにしてしまう。越後のは節度があるが、人吉の兼続は意地汚いものだ」
2人は俺が居ることに気が付いているようだったが、更に声高に続けた。
「あの方はいま殿の嫁を探しているようだが、もしかすると自らの姉を離縁させ、殿に嫁がせるかもしれぬ」
それを聞いてから記憶が無く、我に返ったときには頼蔵に取り押さえられていた。
「よりあにが大喧嘩をするくらいだから、余程のことを言われたんだろ」
殿は俺に情状酌量の余地ありと見ていたようだったが、どんな理由であれ城中で騒ぎを起こしてしまったことに変わりはない。
俺は理由は語らず、喧嘩両成敗ということで実家にて明日より3日間の謹慎となった。
そのことを父に告げると、父は怒りもせず、冷静に理由を訊ねた。
実家に置いてもらう以上、父には事実を言わねばならない。
俺は答えた。
「私は自身を罵られることは構いません。しかし、話を姉上にまで波及されたことに腹が立ったのです。姉上には姉上の生活と人格があるにも関わらず、そこまで侮辱されたように感じ、我慢ならなかったのです」
父は黙って聞いていたが、話が終わると、
「そうか。わかった」
と頷いた。
「写経でもして心を鎮めていくといい」
父は穏やかにそう言い、俺の失態については全く指摘しなかった。
殿様の御ため、俺はここで心を落ち着け、二度と今日のようなことをせぬよう努める。
「この御家中にも、越後の兼続殿に似た者がいるようだ」
越後の兼続と言えば、上杉景勝に仕える越後第2位の人物であるが、彼らが意図していたのは違う意味でのその人であった。
「進言諫言と言いながら、主君を意のままにしてしまう。越後のは節度があるが、人吉の兼続は意地汚いものだ」
2人は俺が居ることに気が付いているようだったが、更に声高に続けた。
「あの方はいま殿の嫁を探しているようだが、もしかすると自らの姉を離縁させ、殿に嫁がせるかもしれぬ」
それを聞いてから記憶が無く、我に返ったときには頼蔵に取り押さえられていた。
「よりあにが大喧嘩をするくらいだから、余程のことを言われたんだろ」
殿は俺に情状酌量の余地ありと見ていたようだったが、どんな理由であれ城中で騒ぎを起こしてしまったことに変わりはない。
俺は理由は語らず、喧嘩両成敗ということで実家にて明日より3日間の謹慎となった。
そのことを父に告げると、父は怒りもせず、冷静に理由を訊ねた。
実家に置いてもらう以上、父には事実を言わねばならない。
俺は答えた。
「私は自身を罵られることは構いません。しかし、話を姉上にまで波及されたことに腹が立ったのです。姉上には姉上の生活と人格があるにも関わらず、そこまで侮辱されたように感じ、我慢ならなかったのです」
父は黙って聞いていたが、話が終わると、
「そうか。わかった」
と頷いた。
「写経でもして心を鎮めていくといい」
父は穏やかにそう言い、俺の失態については全く指摘しなかった。
殿様の御ため、俺はここで心を落ち着け、二度と今日のようなことをせぬよう努める。
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