今日は休日だった。
先週やり残した仕事も無かったので、二の丸に植えてあるイチョウの木の上で昼寝をした。
そこならば誰かに邪魔されることも、深水頼蔵に出会うこともない。
子供の頃は、木に登ったものの、よく下りられなくなっていた。
それでも自力で下りようとして、足を滑らせて落ちたり、仕方なく父が助けに来てくれたものだった。
父がそのとき、「おまえは猫か」とあきれていたのを、いまでも鮮明に思い出せる。
しばらく昼寝をしていると、下から殿の声が聞こえてきた。
「よりあに、桃もらったから一緒に食べよう」
殿はいつもの、まだ子供のような笑顔で俺を見上げていた。
足元にはキジ馬もいた。
俺は「ではご一緒させていただきます」と言って木から下り、殿とイチョウの木陰で桃を食った。
「よりあにって、名前は『犬』なのに、なんだか猫みたいだね」
殿はキジ馬に桃の欠片を与えながら、そう呟いた。
「高いところとか、あたたかいところが好きだし」
殿様の御ため、俺は「にゃー」と鳴いておいた。
殿は桃を喉に詰まらせていた。
先週やり残した仕事も無かったので、二の丸に植えてあるイチョウの木の上で昼寝をした。
そこならば誰かに邪魔されることも、深水頼蔵に出会うこともない。
子供の頃は、木に登ったものの、よく下りられなくなっていた。
それでも自力で下りようとして、足を滑らせて落ちたり、仕方なく父が助けに来てくれたものだった。
父がそのとき、「おまえは猫か」とあきれていたのを、いまでも鮮明に思い出せる。
しばらく昼寝をしていると、下から殿の声が聞こえてきた。
「よりあに、桃もらったから一緒に食べよう」
殿はいつもの、まだ子供のような笑顔で俺を見上げていた。
足元にはキジ馬もいた。
俺は「ではご一緒させていただきます」と言って木から下り、殿とイチョウの木陰で桃を食った。
「よりあにって、名前は『犬』なのに、なんだか猫みたいだね」
殿はキジ馬に桃の欠片を与えながら、そう呟いた。
「高いところとか、あたたかいところが好きだし」
殿様の御ため、俺は「にゃー」と鳴いておいた。
殿は桃を喉に詰まらせていた。
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