俺は、女中の連中から無駄に恐れられている。
嫌われていると言うよりも、どちらかと言うと不気味に思われているようだ。
今日の昼休み、日当たりのいい縁側でひとり、なにをするわけでもなくぼんやりとしていた。
すると、庭の端の木陰に座って談笑している3、4人の女中の姿が目に入った。
ほんの一瞬視界に入っただけであったが、その一瞬、女中の1人と目が合った。
その途端にそいつは顔が青くなり、他の連中に俺が居ることを膝を叩いて知らせると、
「申し訳ございません。すぐ仕事に戻ります」
と言って全員俺に一礼し、その場から去っていった。
まだ十分昼休みの時間は残っていた。
加えて、休みが終わるすこし前に、女中の仕事場の付近を通り掛ると、ほんとうに仕事をしていた。
俺は仕事の目付け役でもないし、女中の連中が仕事をしようが怠けようが、知ったことではない。
だが、俺が恐怖政治のように連中に仕事をさせても、間接的にそれが殿様の御ためになるのなら、それでも構わない。
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