午後、宇土の小西行長から殿宛てに書状が届いた。
殿は書状を受け取ると、喜々としてすぐさま封を開けようとしたが、ぴたりと止まって俺をちらりと見た。
「私が居ると見づらい手紙ですか?」
殿の不審な態度に対し、俺は憚りもせずに訊ねた。
「見づらいと言うより…」
怒られるかもしれない、と思って。
言いにくそうに殿はそう答えた。
よく意味が分からなかったので詳細を求めると、その手紙は「くりすます」について事細かに書かれたものだった。
俺は受取人である殿に封を開けさせ、内容を確認した。
確かに「くりすます」についての手紙であった。
「殿。くりすますをやりたくて、小西行長に書状を求めたのですか」
俺は殿に手紙を返した。
「…うん」
「できるわけがないでしょう。加藤も島津も基督教を嫌っているのに、殿が切支丹の祭りなどに手を出したらどうなるとお思いですか」
俺がこう言うと、殿は黙り込んでしまった。
「でも、庭の木に飾り付けをするなんて七夕みたいなものじゃんか」
この言葉、小西が聞いたらどうするか。
殿の幼稚な姿勢に、俺は若干頭に来ていた。
そのせいか、勢いで次のようなことを言ってしまった。
「七夕に似ていようが似てなかろうが、切支丹が絡むことは控えてください。少しはお家のことも考えていただきたい」
目を覚ましてもらうため、殿様の御ために言ったつもりであった。
が、殿は悲しそうな顔をし、「うん」と頷いた。
俺が言ったことは、今の時勢からすると正しいことだと信じている。
しかし、何故か後悔が離れない。
俺の殿様の御ためは、殿の喜ぶ顔を見るだけではない。
あのような顔も見なければ、ほんとうの殿様の御ためではないはずだ。
それなのに何故、「言わなければ良かった」という思いが消えぬのか。
殿は書状を受け取ると、喜々としてすぐさま封を開けようとしたが、ぴたりと止まって俺をちらりと見た。
「私が居ると見づらい手紙ですか?」
殿の不審な態度に対し、俺は憚りもせずに訊ねた。
「見づらいと言うより…」
怒られるかもしれない、と思って。
言いにくそうに殿はそう答えた。
よく意味が分からなかったので詳細を求めると、その手紙は「くりすます」について事細かに書かれたものだった。
俺は受取人である殿に封を開けさせ、内容を確認した。
確かに「くりすます」についての手紙であった。
「殿。くりすますをやりたくて、小西行長に書状を求めたのですか」
俺は殿に手紙を返した。
「…うん」
「できるわけがないでしょう。加藤も島津も基督教を嫌っているのに、殿が切支丹の祭りなどに手を出したらどうなるとお思いですか」
俺がこう言うと、殿は黙り込んでしまった。
「でも、庭の木に飾り付けをするなんて七夕みたいなものじゃんか」
この言葉、小西が聞いたらどうするか。
殿の幼稚な姿勢に、俺は若干頭に来ていた。
そのせいか、勢いで次のようなことを言ってしまった。
「七夕に似ていようが似てなかろうが、切支丹が絡むことは控えてください。少しはお家のことも考えていただきたい」
目を覚ましてもらうため、殿様の御ために言ったつもりであった。
が、殿は悲しそうな顔をし、「うん」と頷いた。
俺が言ったことは、今の時勢からすると正しいことだと信じている。
しかし、何故か後悔が離れない。
俺の殿様の御ためは、殿の喜ぶ顔を見るだけではない。
あのような顔も見なければ、ほんとうの殿様の御ためではないはずだ。
それなのに何故、「言わなければ良かった」という思いが消えぬのか。
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