今日は先々代の命日だった。
殿は墓参りのために相良家菩提寺に行き、俺も同行した。
幸い天気にも恵まれた。
普段ならよく喋る殿であるが、口数は少ない。
ただ俺の視線に気が付くと、いつものように愛想よく微笑んだ。
悪さをしてはしょっちゅう父親に叱られていた殿だが、「当主とその息子」といった固い関係ではなく、「父親と息子」といった自然な仲だった。
そのぶん、義陽公が戦死したと聞いたときの衝撃は大きかったのではないだろうか。
そして、いまでもその事実を引きずりながら生きているのではないだろうか。
殿様の御ため、俺は今日1日は口うるさく注意するのをやめた。
すると、静かな部屋の中で、殿が呟いた。
「父さんがそこに居るね」
殿の部屋、つまり代々の当主の部屋の中央を見て、殿は懐かしそうに笑った。
俺はあまり笑えなかった。
殿は墓参りのために相良家菩提寺に行き、俺も同行した。
幸い天気にも恵まれた。
普段ならよく喋る殿であるが、口数は少ない。
ただ俺の視線に気が付くと、いつものように愛想よく微笑んだ。
悪さをしてはしょっちゅう父親に叱られていた殿だが、「当主とその息子」といった固い関係ではなく、「父親と息子」といった自然な仲だった。
そのぶん、義陽公が戦死したと聞いたときの衝撃は大きかったのではないだろうか。
そして、いまでもその事実を引きずりながら生きているのではないだろうか。
殿様の御ため、俺は今日1日は口うるさく注意するのをやめた。
すると、静かな部屋の中で、殿が呟いた。
「父さんがそこに居るね」
殿の部屋、つまり代々の当主の部屋の中央を見て、殿は懐かしそうに笑った。
俺はあまり笑えなかった。
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